刑法における違法性阻却事由としての「義務の衝突」(Pflichtenkollision)に関して、各種の違法性阻却事由との関係を多元的に考察した上で、とりわけ、緊急避難に近似する緊急行為の領域における「義務の衝突」について、利益衝突の構造的差異を分析しつつ類型化を厳密に行い、それぞれの類型における義務衝突行為(緊急行為)の特質に応じた正当化の根拠と基準、さらに、正当化の概念などについて究明を試みています。そこでは、「永遠のアポリア」と称されてきた「義務の衝突」の問題に関する法哲学や道徳哲学などの学問的知見をも考慮しながら、日独の刑法における従来の義務衝突論をより進展させることを目指しています。